「カルテット」臺詞-第一集
zhouer / 2022-04-27
從第一集開始學習吧~
世吹 すずめ(せぶき すずめ):… 2 3 4 5 6 7 75 100 200 270…
巻 鏡子(まき きょうこ):すずめさんですよね? あなたに お願いしたい お仕事があるんです。
世吹 すずめ:演奏だったら どこでも。
巻 鏡子:いや あの… この女性と 友達になる仕事です。
別府 司(べっぷ つかさ):どうも。
巻 真紀(まき まき):どうも。
別府 司:バイオリン 大丈夫ですか?
巻 真紀:はい。
別府 司:冬の軽井沢(かるいざわ)もいいですよ,10時になると どこも シャッター下ろしちゃいますけど,別荘は 旧軽井沢の奥にあります,祖父の持ち物なので いくら 音(おと)を出しても問題ありません。
別府 司:すいません,1人で喋って(しゃべって)て。
巻 真紀:昨夜緊張して なかなか眠れ(ねむれ)なくて,動画みちゃたら 余計(よけい)眠れなくなって。
別府 司:動画?
巻 真紀:カモの赤ちゃんが排水溝に 次々と落ちてって。
別府 司:マジですが… 家森さんも すずめちゃんも 巻さんが来るのを 楽しみにしています,僕は 運命だと思ってるです,ほら 僕達 東京のカラオケボックスで 偶然出会いって… しかも その4人が 4人とも奏者で,バイオリン バイオリン ビオラ チェロ,弦楽四重奏 組むしかないですよね,僕たち 絶対最高の カルテットになります。
巻 真紀:絶対何で…
別府 司:はい?
巻 真紀:人生には 三つの坂(さか)があるそうです。
別府 司:三つの坂,はい。
巻 真紀:上り(のぼり)坂 下り(くだり)坂。
家森 諭高(いえもり ゆたか):バイバイ。
家森 諭高:巻さん,どうも 家森です。
別府 司:今の女の人って。
家森 諭高:女子大生一人旅(たび)なんだって 道聞かれて。
別府 司:道聞かれただけですか?
別府 司:土日だけじゃなくて 平日もですか?
家森 諭高:一緒にいればカルテットの結束(けっそく)も固まるじゃないの? 僕はずっと住みますよ。
別府 司:住むといっても 巻さん ご家庭がありますし?
家森 諭高:別府君は 巻さんのこと 上の名前で呼んでるの? 下の名前で呼んでるの?
別府 司:いや 巻真紀さんだから同じ(おなじ)だし…
家森 諭高:自分のつもりとして。
別府 司:上のつもりです。
別府 司:泊まりになると 夫さん𠮟られ(しかられ)ちゃいますよね?
家森 諭高:巻さんちはセレブだもんね。
巻 真紀:君の好きにしていいよって。
巻 真紀:君の好きにしていいよって。
別府 司:夫さんが。
巻 真紀:君は君らしくって。
別府 司:こちです 滑る(すべる)んで 気をつけてください。
別府 司:部屋は2階に1人ずつ 個室があります,お風呂も二つありますから 男女別だし。
別府 司:すずめちゃん どこでも寝ちゃうんです。
家森 諭高:昨日はトイレで寝てました。
別府 司:巻さんが来るの 楽しみにしてましたよ。
巻 真紀:すずめちゃん,すずめちゃん。
別府 司:すずめちゃん。
家森 諭高:すずめちゃん。
巻 真紀:すずめちゃん。
別府 司と家森 諭高:すずめちゃーん!
世吹 すずめ:はい。
別府 司:巻さん 到着されました。
巻 真紀:痛い。
別府 司:大丈夫ですか?
世吹 すずめ:今 持ってきますね。
別府 司:今 着いたばっかりだし。
巻 真紀:アー ください。
別府 司:どうしました?
巻 真紀:うまく弾きないかも。
別府 司:ここでプロの経験がある奏者は 巻さんだけなんですよ。
家森 諭高:心配性なんですね。
別府 司:カモが排水溝に 落ちる動画見て,眠れなくなったそうです。
家森 諭高:もっと元気の出るもの見ないと。
巻 真紀:そう思って プレミアリーグ オウングール 十連発というのを見たら。
家森 諭高:何でスーパーゴール見なかったんですか。
別府 司:まあ 気軽いやってみましょう。
巻 真紀:はい。
世吹 すずめ:みぞみぞしてきた。
家森 諭高:みぞみぞって?
世吹 すずめ:みぞみぞすることですよ。
別府 司:揚がり(あがり)ました。
家森 諭高:はい。
巻 真紀:どう思います。
世吹 すずめ:一弓(ゆみ)の方(ほう)がいいかも。
巻 真紀:そっか はい。
家森 諭高:ご飯できましたよ。
巻 真紀:はい。
別府 司:これからもよろしくお願いします。
すべて:よろしくお願いします。
別府 司:温かい(あたたかい)うちに食べましょう。
家森 諭高:あ 小皿。
世吹 すずめ:美味しそう。
別府 司:ですよね。
家森 諭高:ねえねえねえ 君達 何してるのですか?
世吹 すずめ:唐揚げ食べるのですが。
家森 諭高:これ。 これ。
世吹 すずめ:レモン。
家森 諭高:レモン。
別府 司:はい。
家森 諭高:今 君達 何で唐揚げにれもんしたの?
世吹 すずめ:何で? 唐揚げはレモン
家森 諭高:人それぞれ。
家森 諭高:「人それぞれ」。
世吹 すずめ:ここれレモン。
家森 諭高:それは 個々にさ,自分たちの皿に取り分けた後に 個々に かけるために置いたんじゃないか。
世吹 すずめ:「じゃないか」。
家森 諭高:唐揚げにはレモンするよって人と,レモンなんかするわけないでしょって 人がいるじゃないか。
別府 司:かけた方がおいしですよ。
家森 諭高:まずカリカリ度が減る(へる)よね。
別府 司:かけた方が健康にいいですし。
家森 諭高:唐揚げ食べる時点で 健康は一旦脇に(わきに)置いてあるじゃないか。
世吹 すずめ:かけた方がおいじゃないか。
家森 諭高:違う,違うよ,僕が言いたいのは。
世吹 すずめ:レモンぐらいで怒らなくていいじゃないか?
別府 司:今後気をつけますから レモンぐらいで。
巻 真紀:レモンぐらいってこと…
別府 司と世吹 すずめと家森 諭高:えッ?
巻 真紀:いえ。
家森 諭高:巻さん 今 何で?
巻 真紀:レモンぐらいってことは ないと思うんですが。
家森 諭高:巻さん レモンしない派ですか?
巻 真紀:するしないというより ごめんなさい,今 大事なものは そこじゃないと思うんですけど。
別府 司:何ですか?
巻 真紀:どうして かける前に 聞かなかったんですか?
家森 諭高:それッ そのこと!から揚げにレモンかけたい人がいるのは当然です,ダメと言ってるわけじゃないの。
巻 真紀:「れもんかけますか?」 なぜその一言が なかったのかと 家森さんは,,,
家森 諭高:そのこと。 別府君 唐揚げは洗える(あらえる)?
別府 司:洗えません。
家森 諭高:レモンするってことは不可逆なの。
別府 司:不可逆なの?
家森 諭高:二度と元には戻れないの。
別府 司:すみません。 「かけます?」って 聞けばよかったんですかね。
別府 司:違うんですか?
家森 諭高:レモンするかどうか聞くっていう文化には さ…
世吹 すずめ:「文化」
家森 諭高:二つの流派があって。
別府 司:「流派」
家森 諭高:分かりますよね?
巻 真紀:分かります。
家森 諭高:君達 レモンかける時 聞くとして何て聞く?
別府 司:レモンかけますか?
家森 諭高:ああ,はい。
家森 諭高:こうなるでしょ 「レモンかけますか?」」「ああ,はい」,かけるの当たり前な空気生まれて,全然大丈夫じゃないのに 「大丈夫ですって」 なるでしょう。 これ脅迫ですよ こっち防御(ぼうぎょ)一方(いっぽう)です
別府 司:どう言えばいいんですか?
巻 真紀:レモン ありますね?
家森 諭高:レモン ありますよ
家森 諭高:こういうの
世吹 すずめ:ちょっと 意味が分からないじゃないか
家森 諭高:君 僕のことバカにしてる?
世吹 すずめ:バカになんかしてないじゃないか
家森 諭高:何かビオリストは 器(うつわ)が小さいみたいな
巻 真紀:家森さん お気持ちはわかりますが,唐揚げを見てください
家森 諭高:はい
巻 真紀:冷えは始めています
家森 諭高:ごめんなさい,失礼しました,食べましょう
すべて:いただきます
世吹 すずめ:おいしそう
家森 諭高:いや 申し訳ないです,五年生の時も こういうことあって,僕が学級会の議題になっちゃって
世吹 すずめ:何でですか?
家森 諭高:君には教えないよ
世吹 すずめ:何だろう?
家森 諭高:僕のトラウマ 想像しなくていいよ
別府 司:あッ 東北では トマトに 砂糖かけるって知ってます?
巻 真紀と世吹 すずめと家森 諭高:えーッ!?
巻 真紀:いつか国立の劇場で 演奏できるといいですね
別府 司:夢の話ですよ
家森 諭高:そりゃあれ 音楽で食べていけたら それはれ
世吹 すずめ:巻さんは いつ結婚されたんですか?
巻 真紀:三年前です
家森 諭高:夫さん 広告代理店の人なんだって
世吹 すずめ:どこを好きになったんですか?
別府 司:聞きますね
巻 真紀:彼 平熱が七度2分あるです
世吹 すずめ:平熱高いから 好きになったんですか?
巻 真紀:平熱高いと ここからね ちょっといい匂い(におい)がするんです
家森 諭高:いいな 家庭がある人は
巻 真紀:ただいま
巻 真紀:上り坂~ 下り坂~
別府の上司:別府君 おじ様は 今… ドイツ?
別府 司:はい たぶん
別府の上司:ないやってんの?
別府の上司:派遣さん…
派遣社員:はい
別府の上司:別府君に こんなんことやらせちゃダメですかしょ
派遣社員:すいません
別府 司:ああ いえ
別府の上司:別府君は いる竹で価値があるの
同僚:ヤモリさん
家森 諭高:イエモリです
同僚:シャンプー
家森 諭高:はい 失礼します
客:あら 店長さんが シャンプーしてくださるの?
家森 諭高:いえ 自分はアシスタントです
客:ごめんなさい 30代に見えたから
家森 諭高:35です バイトリーダーです
テレビ:ここで 今入った ニュースを伝え(つたえ)します。 東京杉並区の公園の池から 40代男性とみられる 遺体が発見されました,今日 午後3時頃 杉並区北町三丁目の公園内を散歩中の男性から 人のようなものが池に浮いて いると110番通報がありました,警視庁によりますと 遺体は 40代の男性とみられていて,目立った傷(きず)は ないということです。
巻 真紀:ゆうべ あんまり眠れなくて
家森 諭高:また何か動画見たんでしょ
巻 真紀:イチロー選手の エラー動画集っていうのを
家森 諭高:珍しいもの見つけましたね
巻 真紀:そこ気をつけて
別府 司:はい?
別府 司:マジか
家森 諭高:別府君 大丈夫?
巻 真紀:気をつけて
巻 真紀:すずめちゃん そこ…
巻 真紀:気をつけて…
家森 諭高:早くして 早くして スースーする スースーする
別府 司:我慢してください
家森 諭高:別府君 僕のパンツ洗ったでしょ? あれ 一枚しか 持ってなかったんだよ
別府 司:えッ じゃ 今って…
家森 諭高:はいてないよ
世吹 すずめ:別府さん 場所変わってください
家森 諭高:君は今 僕のノーパン情報が 入ってるってだけのことで,普段は僕のノーパンなのか ありパンなのか認識してないでしょ
別府 司:そんなに頻繫にノーパンなんですか?
家森 諭高:急ぎだとね スカートはいてるわけじゃないんだし,ほら 全然分かんない ノーパンかどうか 全然
別府 司:撮りますよ
別府 司:3 2…
家森 諭高:ちょっと ダメだよ 破れ(やぶれ)ちゃう
別府 司:どうしました?
巻 真紀:集中しすぎると いつとやっちゃうんです
別府 司:あッ ですよね,僕もたまに誤解(ごかい)されちゃいます
巻 真紀:分かってて 意地悪言うんですよ
別府 司:夫さんでうか
家森 諭高:あれ バディソープ買ったっけ?
別府 司:えッ
家森 諭高:バディソープ切れてたとよね?
別府 司:買いましたよ
世吹 すずめ:何をですか?
家森 諭高:うん? バディソープ
家森 諭高:何?
世吹 すずめ:何でもないです バディソープ買いましたよ
ベンジャミン 瀧田(ベンジャミン たきた):ねえ 君達 ひょっとして プレーヤー? カルテット?
巻 真紀:はい
ベンジャミン 瀧田:俺 ピアノやってだ~ よかったらさ 一度聴きに来いよ 一杯おごるぜ おい じゃ
別府 司:マジか 家森さん 気づきました?
家森 諭高:うん 気づいた
世吹 すずめ:有名な人なんですか?
別府 司:「あしたのジョー」の帽子でしたね
家森 諭高:「あしたのジョー」の帽子でしたね!
別府 司:「あしたのジョー」の帽子でしたね!
家森 諭高:「あしたのジョー」の帽子だったね!
別府 司:イエーイ!
家森 諭高:別府君 すずめちゃん寝ちゃ…
別府 司:はい?
家森 諭高:何でもない
別府 司:家森さん
別府 司:家森さん
家森 諭高:ばに?
別府 司:何でもないです
家森 諭高:別府君?
家森 諭高:別府君
家森 諭高:何してるんですか?
巻 真紀:別府さんは?
別府 司:それで別府君にやらない方が…
家森 諭高:危ないから
家森 諭高:何慌ててるの 別府君?
別府 司:地元の
家森 諭高:地元?
別府 司:知り合いが教えてくれたんですけど 国道沿いに ライブレストランあるの分かります?
家森 諭高:あるね あの店で 演奏できたら最高だけど
別府 司:土曜と日曜の枠(わく)が あくかもしれないって
谷村 大二郎(たにむら だいじろう):責任者出てるんで とりあえず 店で中見てもらえますか
別府 司:すごい
家森 諭高:すごいですね このお店で演奏できたら 最高だね
世吹 すずめ:上がても?
谷村 大二郎:どうぞ
家森 諭高:あの ぜひ一度 僕達の演奏を聴いていただいて
谷村 多可美(たにむら たかみ):ただいま
来杉 有朱(きすぎ ありす):ただいま~
来杉 有朱:ただいまでーす
谷村 大二郎:お帰り 有朱ちゃん
谷村 多可美:ただいま
谷村 大二郎:お帰り ママ
谷村 大二郎:責任者
谷村 大二郎:弦楽四重奏なんだって ほら 土日のあく枠の…
谷村 多可美:いや パパ 土日あかないって
谷村 大二郎:ベンジャミンさん 辞めてもらうんじゃないの?
谷村 多可美:無理でした
別府 司:マジか…
来杉 有朱:土日って暇なんです,はじめは みんな感動して 泣いてたんですよ,私も すごい泣けて 気持ちよかったんですけど。 これ 言い始めでから もう一年たってて。
家森 諭高:そうなんだ
来杉 有朱:でも こういう人辞めさせたら,お店が炎上するじゃないですか
家森 諭高:そういうものなんだ
来杉 有朱:私 元地下アイドルなんですけど,しょっちゅう炎上してました
巻 真紀:目が笑ってないからかな
来杉 有朱:笑てますよ ごゆっくり
家森 諭高:ご病気じゃしょうがないよね
別府 司:ですよね
巻 真紀:あの 大きな声じゃ 言えないんですけど
家森 諭高:いつも通りです大丈夫です
巻 真紀:あの人 五年前に 東京のライブハウスで見た時も 余名9ヶ月でした,たぶん そうやって名前も変えて 日本中回ってるんだと思います
家森 諭高:じゃ…
巻 真紀:ベンジャミンさんは ニセ余名9ヶ月のピアニストです,どうします?
別府 司:どうしますで…
巻 真紀:お店の方に言えば 代わりに私達が…
ベンジャミン 瀧田:カルテット,来たね~ 嬉しいね~ ようこそ ようこそ
ベンジャミン 瀧田:ようこそ 嬉しいよ ありがとう
ベンジャミン 瀧田: 有朱ちゃん ボトル持っていきてよ
来杉 有朱:はい
ベンジャミン 瀧田: ありがとう ありがとう さあ 飲もうぜ
ベンジャミン 瀧田:分かった 分かった 帰る 帰るから じゃあ もう一軒行こう 行こう
ベンジャミン 瀧田:何?
別府 司:もうお帰りになった方が…
ベンジャミン 瀧田:帰る? 帰ろう 俺んち帰ろう で 俺んちで飲もう
ベンジャミン 瀧田:乾杯
別府 司:乾杯
ベンジャミン 瀧田:俺のLP出しちゃおうかな,出したことあんだよ おれのLPだよ LP ほらな ほらLP 聴くか 聴くか おい 司?
別府 司:はい
ベンジャミン 瀧田:プレーヤーだせ ねえんだよ,君達みたいな若いプレーヤーとね ホントに出会いたかった,音楽っていうのはね 真面目にやるなよ,遊べよ なッ。 プレーは プレーなんだよ 分かるな?
巻 真紀:アー ください
世吹 すずめ:ベンジャミンさん 鼻毛伸びてましたね
家森 諭高:抜いてあげねばよかったね
別府 司:また あそこのスーパーで 演奏できるか聞いてみますね,ねッ 巻さん
巻 真紀:いつかイオンモールで 演奏できたらいいですね
巻 真紀:きっと今頃は 家中散らかってます,そこら中に 靴下(くつした) 脱ぎ散らかす人で
別府 司:夫婦って いいですね
巻 真紀:そうですか?
別府 司:ええ 夫婦って なんですか?
巻 真紀:夫婦? 夫婦って… …なんだと思います
別府 司:そうですか いいな
巻 真紀:うん?
巻 真紀:じゃあ また来週
別府 司:はい
半田 温志(はんだ あつし):見つけちゃった
別府 司:持つよ
九條 結衣(くじょう ゆい):世界の別府の孫(まご)に手伝わせたら怒られるんで
別府 司:誰ですか 風呂の掃除させたの?
九條 結衣:カニもらったからさ 食べにおいでよ
別府 司:また むく係? 食べる係?
九條 結衣:ですね~
家森 諭高:ねえ マグネットって
別府 司:ああ
別府 司:はい ここでいいですか? よいしょ
家森 諭高:すずめちゃん 何食べてるの?
世吹 すずめ:みかんつめつめゼリー
家森 諭高:僕の
世吹 すずめ:うん?
家森 諭高:うん? じゃなくて 僕のみかんつめつめゼリー
世吹 すずめ:いや これは巻ちゃんのです
家森 諭高:楽しみにしてたのに
世吹 すずめ:巻さんのですって 巻さん 買ってましたもん,あッ 巻さんが家森さんの 食べたんじゃないですか?
家森 諭高:いやいや 巻さんが食べたとしても 僕が食べてない以上,君は買ってない以上 それは僕のていうことだとね
世吹 すずめ:巻さんのですって
家森 諭高:じゃあ 僕のは?
世吹 すずめ:巻さんが食べました
別府 司:巻さんから連絡ありました? 新幹線乗ったらするって
家森 諭高:なんで分かんないかな 二つありました
別府 司:迎えに行かなくていいのかな
家森 諭高:別府君 紙貸して 図解して この人に解説するから
別府 司:ちょっと待ってください 先に紙…
世吹 すずめ:怖い怖い
別府 司:巻さんに連絡します
家森 諭高:みかんつめつめゼリーは 僕のだろうが
別府 司:すいません 巻さん? まだ東京ですか? えッ
谷村 大二郎:この間(あいだ)の…
谷村 多可美:ごめんなさいね 話がちゃんと通ってなくて
谷村 大二郎:忘れ物ですか?
巻 真紀:この方のことなんですけど
谷村 多可美:ベンジャミンさん?
巻 真紀:ベンジャミン 瀧田さんが 余命9ヶ月とおっしゃってるのは これ全部 噓です
谷村 多可美:こにちは
別府 司:こちらに巻という者は?
谷村 多可美:バイオリンの方は 控え(ひかえ)室の下見をされてます ちょっと待っててね
谷村 多可美:これ以上 あなたをお店に出したら,私達も お客さんを だますことになるから
谷村 多可美:どうだった?
巻 真紀:着替える場所もありますし,4人で十分使えます
谷村 多可美:じゃあ まず今晩 演奏してみてもらえる?
巻 真紀:はい 一旦戻って(もどって) 夕方まいります
別府 司:止でください
別府 司:拾って(ひろって)きます
ベンジャミン 瀧田:サンクス
家森 諭高:一曲目は自己紹介的に ハイドンか ベートーベンか
巻 真紀:スメタナって?
家森 諭高:モルダウですか アレンジできたんですか?
家森 諭高:せっかくだから やりたいですよね
巻 真紀:合わせてみますか?
家森 諭高:別府君は やれそう?
別府 司:はい はい
巻 真紀:じゃあ 一回やりましょう 時間ないし
家森 諭高:そうだね パンツはく時間 なくなっちゃう,いや はいてた
世吹 すずめ:確かめないと分かんないんですか
別府 司:コーン茶入れてきます,お隣の方にいただいたんです
家森 諭高:じゃなくて 飲んでる時間ないから
別府 司:はい
家森 諭高:じゃあ ボーイング決めて…
巻 真紀:しょうがないじゃないですか ベンジャミンさんは 噓ついてたんですから
家森 諭高:別府君 それで機嫌悪いの?
別府 司:機嫌悪くないです
家森 諭高:大丈夫?
別府 司:大丈夫です
巻 真紀:じゃ 態度も大丈夫にしてください
別府 司:すいません
家森 諭高:まあ 後味悪いっていえば 悪いけどね
別府 司:あの人は 好きな音楽 続けたかっただけなんです,ついていい噓だった あると思うんですよね
巻 真紀:余命何ヶ月って ついていい噓なんですか?
家森 諭高:コーン茶
世吹 すずめ:コーン茶いらないって
家森 諭高:あの人の部屋 ポスター 貼ってあったじゃん テープで 剝がれてたんでしょう,躊躇なく 壁に画びょう 刺したりできないんじゃない? いや 僕は別府君とは また立場(たちば)違ってさ,あっち側(かわ)だから分かるんだよ 僕も,画びょうも刺せない人間が,音楽続けていくためには 噓ぐらいつくだろうなって
別府 司:もっと他(ほか)にやり方が あったんじゃないですか?
巻 真紀:やり方?
別府 司:もっと思いやりがある…
巻 真紀:思いやり? 同情ってことですか?
家森 諭高:同情を悪い言葉かのように 使うのは違うと思いますよ
家森 諭高:僕は正直(しょうじき)驚き(おどろき)ました,巻さんが あんなことするなんて
別府 司:ベンジャミンさんの奥さんと 子供の写真見ましたよね? 理由は分からないけど いまは1人で暮らしてて
家森 諭高:どこ行くの?
世吹 すずめ:コーン茶
家森 諭高:だから コーン茶は…
世吹 すずめ:じゃあ 別府さんと 家森さんが ベンジャミンさんと一緒に暮らしてあげればいいんじゃないですか? ベンジャミンさんの奥さんと息子さんに なってあげれば いいんじゃないでしょうか?
家森 諭高:なれないね
世吹 すずめ:じゃあ お金あげればいいじゃないですか
家森 諭高:そんなことしたら プライト傷つくでしょ
世吹 すずめ:じゃあ 面白い漫画とか貸してあげればいいんじゃないですか?
家森 諭高:どういうこと?
世吹 すずめ:これ読んで元気出してって
家森 諭高:じゃなくて ベンジャミンさんの立場…
世吹 すずめ:家森さんも鼻毛 伸ばせばいいじゃないですか 一緒ですねって
家森 諭高:僕 鼻毛伸びにくいんだよ
世吹 すずめ:ここに 鼻毛に見える入れ墨(いれずみ)彫れ(ほれ)ばいいじゃないですか
家森 諭高:どういうこと?
世吹 すずめ:入れ墨彫る勇気ないなら 同情やめた方がいいです
別府 司:同情じゃありません 思いやりを…
巻 真紀:思いやりじゃないよね あの人に未来の自分達を 見たからですよね? 私達 アリとキリギリスの キリギリスじゃないですか,音楽で食べていきたい って言うけど,もう答え出てると思うんですよね。 私達 好きなことで生きていける 人にはなれなかったんです,仕事に出来なかった人は 決めなきゃいけないと思うんです,趣味にするのか それでも まだ夢にするのか。 趣味にできたアリは幸せだけど,夢にちゃったキリギリスは 泥沼(どろぬま)で。 ベンジャミンさんは 夢の沼に 沈ん(しずん)だキリギリスだったから,噓つくしかなかった。 そしたら こっちだって 奪い取る(うばいとる)しかなかったんじゃないですか?
別府 司:ごめんなさい
別府 司:はい,僕はグズグズ言ったから,せっかくいい仕事決まったのに。 ごめんなさい
家森 諭高:コーン茶 飲もうか
別府 司:飲みましょうか
家森 諭高:ボーイングだけでも 合わせましょう
世吹 すずめ:でも巻さんには 帰る所あるじゃないですか。 帰る家あるし 夫さん いい会社の人だし,こうするしかなかったってこと ないですよね? ちゅうちょなく 壁に画びょうさせますよね? 好きなことして 食べていけますよね
家森 諭高:すずめちゃん
世吹 すずめ:夫さんと喧嘩でもしたんですか?
家森 諭高:ボーイング 合わせないと
世吹 すずめ:ごめんなさい。 でも夫さんから 電話かかってくる感じもしないし,連絡取らなくて いいのかなって?
巻 真紀:忙しい人だから
世吹 すずめ:今度こっちに来てもらったらいいじゃないですか? 巻さんの演奏聴いてもらえばいいじゃないですか?
巻 真紀:今度誘って(さそって)みます
世吹 すずめ:いつですか? 来週とか?
巻 真紀:アー もらえますか?
世吹 すずめ:結婚って どんな感じですか?
別府 司:すずめちゃん
巻 真紀:アー もらえますか?
世吹 すずめ:夫婦って どんな感じですか?
家森 諭高:そういうこと聞いて どうするの?
別府 司:夫婦の話は この間 僕が聞きました,素敵だって
巻 真紀:アー ください
世吹 すずめ:どんなふうに?
家森 諭高:だから 今度来てもらえばいいじゃない
世吹 すずめ:そうですね 事実に会って…
巻 真紀:アー もらえますかッ
別府 司:すずめちゃん アー
巻 真紀:この間 唐揚げおいしかったですね
別府 司:はい?
巻 真紀:唐揚げ おいしかったですよね
別府 司:ですよね おいしかったですよね
巻 真紀:夫も唐揚げが好きなんです
別府 司:夫さん どっち派ですか? 唐揚げにレモン?
巻 真紀:結婚して三年になるんですけど
別府 司:ええ
巻 真紀:結婚前が そんなに 長くなかったから,どんなご飯が好きなのかなって。 いつも探りながら ご飯作って(つくって)たんですね
別府 司:はい
巻 真紀:ある時 たまに脂っこいのもいいかと思って,唐揚げ作ったんです。 そしたら 今までにないぐらい おいしい おいしいって食べてくれて。 それから唐揚げが ウチの 定番メニューになんったんです。
家森 諭高:いいですね
巻 真紀:それで 一年前のことなんですけど
世吹 すずめ:はい
巻 真紀:本郷(ほんごう) おいしい居酒屋さんがあって,友達の悩み相談で行ったら。 たまたま 彼も 会社の後輩と一緒にいたんです。 彼 唐揚げを注文してました,声掛けたら てれるかなと思って 迷って(まよって)たら。 その後輩の人が 彼に聞いたんです 「レモン かけますか?」って,そしたら彼 「いい 俺 レモン好きじゃないから」って。 でも私 二年間,ずっと 彼の食べる唐揚げに レモンかけてたんですよね。 目の前で 私 ずっとレモンかけてたのに,かれ 二年間 一度も そんなこと言わなくて。 あれ~と思って
家森 諭高:それは あれじゃないですか 夫さんの優しさ
別府 司:ですよね 気遣いっていうか
巻 真紀:優しさ?
家森 諭高:はい
巻 真紀:気遣いなんですか?
別府 司:です
巻 真紀:要らなかったな,許せなかったです
家森 諭高:いや 唐揚げにレモンぐらいで
巻 真紀:夫婦じゃなかったんだって 思いました,夫婦って 何なんだろうって思いました。 この間 駅で別府さん 聞きましたよね? 「夫婦って何ですかって?」
別府 司:はい
巻 真紀:夫婦って…
巻 真紀:夫婦って… 別れられる家族なんだと思います
別府 司:いや 僕は それ,絶対それ 隠して(かくして)たとかじゃなくて,絶対愛情があってのことだと思います
巻 真紀:愛情?
別府 司:夫さんは 巻さんのこと 絶対大事に思ってたから,絶対愛情があったから…
巻 真紀:「絶対」なんて… 人生には 三つ坂があるんですって,上り坂 下り坂 まさか
巻 真紀:一年前 夫が失踪しました
巻 真紀:ただいま~
巻 真紀:ごめんね すぐ作るから
巻 真紀:ちょっとコンビニ行ってる間に 夫はいなくなって,もう一年帰ってきてません
別府 司:マジか
巻 真紀:絶対なんてないんです,人生って まさかなことが起きるし。 起きたことは もう元に戻らないんです,レモンかけちゃった唐揚げみたいに
世吹 すずめ:理由 分からないですか?
巻 真紀:さっき別府さん 愛情って言いましたけど,そのね 夫がいたん居酒屋あんで もう一つ聞こえたことあって
世吹 すずめ:はい
巻 真紀:後輩の人が 夫に聞いたんです 「奥さんのこと 愛してるんですか?」って
世吹 すずめ:はい
世吹 すずめ:夫さん 何で?
巻 真紀:「愛してるよ 愛してるけど,好きじゃない」って…
巻 真紀:そういうことなので 私 もう帰ると来ないんです
巻 真紀:カーテンも買ってきました,私 ここで皆さんと一緒に 音楽と一緒に暮らしたいです
来杉 有朱:これでいいですか?
別府 司:はい
来杉 有朱:ベンジャミンさんも前に ドーナツの話してましたよ 「音楽っていうのは ドーナツの穴(あな)のようなもんだ,何かが欠けている奴(ヤツ)が奏でる(かなでる)から 音楽になるんだよね」って,全然意味分かんなかったですけど。じゃ 3分前です。
巻 真紀:あの日 カラオケボックスで 皆さんに 偶然出会えてよかったです,あれって 運命だったのかもしれませんね。
別府 司:こんばんは,カルテットドーナツホールです。
巻 真紀:おいしい
巻 真紀:おはようございます。
世吹 すずめ:お水飲んで また寝ますけど。
巻 真紀:お二人は もう仕事に行かれました。
巻 真紀:風邪がな?
世吹 すずめ:流行って(はやって)ますよね。
巻 真紀:あれ ティッシュは…
世吹 すずめ:ティッシュ…
巻 真紀:ティッシュ…
世吹 すずめ:巻さん 家森さんが 紫式部(むらさきしきぶ) 隠し(かくし)持ってるの知ってます?
巻 真紀:紫式部?
世吹 すずめ:一個1600円の超高級ティッシュです。
巻 真紀:1600円!
世吹 すずめ:家森さん 花粉症だから ティッシュに命(いのち)を懸けて,誰にも使わせないんです,どうぞ 今のうちに。
巻 真紀:あいてないですよ 怒られるんじゃないですか?
世吹 すずめ:怒られちゃいそうですよね。
世吹 すずめ:一つだけ 一枚だけ~
巻 真紀:一枚抜いたら 二枚出ますね。
世吹 すずめ:二人ですから。
巻 真紀:二人分取ったら 三人分出てきますよ。
世吹 すずめ:追いつめられた 連続殺人犯みたいですね。
巻 真紀:何か鼻かむの もったいなくないですか。
世吹 すずめ:羽衣みたい。
巻 真紀:ちゃんと ちゃんとしまっとかないと 家森さんに怒らねます。
世吹 すずめ:怒らねますかね。
巻 真紀:さかむけ 肘(ひじ)まで はかされます。
世吹 すずめ:巻さん 買ってきたカーテン きれいですね。
巻 真紀:今日は天気悪いでしょ。
世吹 すずめ:でも どうして曇って(くもって)ると 天気悪いっていうんですかね?いいも悪いも 曇りは曇りでよね。
世吹 すずめ:私は 青空より 曇った空の方が好きです。
世吹 すずめ:じゃあ 二度寝してきますよね。
巻 真紀:私 ちょっと東京行ってきます,在宅でできる仕事がもらえそうなので。
巻 真紀:ありがとう,すずめちゃん。 私も 青空より 曇った空が好きです。
世吹 すずめ:同じですね。
世吹 すずめ:夫さん 何で?
巻 真紀:「愛してるよ 愛してるけど,好きじゃない」って…
巻 鏡子:息子は失踪なんかしていません,この女に殺されたんです。
巻 鏡子:必ず(かならず)どこかで本性が出ます,それまで友達のふりを続けてください。
世吹 すずめ:みずみずしてきました。